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> Quantic Presenta Flowering Inferno / Dog With A Rope ('10.06.19) / BRC-262

キューバ〜ジャマイカ〜コロンビアを繋ぐ、いまだ誰も聴いたことのないトロピカル・ミュージック。
世界各地で熱狂を巻き起こした『Tradition In Transition』に続く新作のテーマは、ラテン×ダブ!
[Track List]
01. Dog with a Rope
02. Dub y Guaguanco
03. Swing Easy
04. Echate Pa'lla (Version)
05. Portada del Mar
06. Cumbia Sobre el Mar
07. Te Pic醇p el Yaib醇^ (Version)
08. No Soy del Valle
09. Echete Pa'lla
10. Te Pic醇p el Yaib醇^
11. Dog With A Rope Dub *Bonus Track for Japan
12. No Soy Del Valle (Inst) *Bonus Track for Japan
クァンティックことウィル・ホランドの音楽世界は、ここ数年でさらなる深みを増している。60〜70年代のクンビアやファンク、レゲエにあったヴィンテージな輝きを放ちながら、それらを魔法のように混ぜ合わせ、ここにしかない独自の音楽スタイルを築き上げてしまったという点において、ウィルの作品は単なる懐古趣味に終わらないものだ。古き良き音楽文化に対する真摯な眼差しと、それを未来へと解き放とうとする確固たる意志。それはデビュー以来ウィルの音源をリリースしてきたイギリスの優良レーベル、トゥルー・ソウツの全カタログにも通じるものだが、ウィルの近作はそうしたレーベル・カラーを象徴するものと言えるだろう。
彼の活動において重要な分岐点となったのが、イギリスから南米コロンビアのカリへと移住したこと。〈サルサの首都〉とも言われるこの町にスタジオを作り、現地の音楽家たちと積極的に交流を重ねることによって、ウィルの作品は飛躍的な深化を果たした。実際、カリ移住後に作り上げられた2作品ーーフラワリング・インフェルノ名義の『Death Of The Revolution』、クァンティック&ヒズ・コンボ・バルバロ名義の『Tradition In Transition』ーーは、それまでディープ・ファンク/ブレイクビーツ・プロデューサーとして知られていた彼の存在を、より広範囲に知らしめることにもなった。特に、伝統的なアフロ・コロンビアン・ミュージックを見事にアップデートした『Tradition In Transition』。今作がここ日本においても各メディアで2009年ベストアルバムにリストアップされ、一際大きな成功を収めたことはご存知の方も多いと思う。
今回届けられた『Dog With A Rope』というアルバムは、『Death Of The Revolution』同様、フラワリング・インフェルノ名義による作品。素晴らしい結果を残した『Death Of The Revolution』および『Tradition In Transition』という近作2作品の世界がここで融合され、見事に華開いている。
歴史的傑作を連発していたリー・ペリーの70年代のサウンド・プロダクションを連想させるダブワイズ。キングストンのゲットーで熟成されたかのような、シャープで乾いたリズム・セクション(スティール・パルスやUB40の屋台骨を支えてきた名ドラマー、コンラッド・ケリーのドラムにも注目したい)。ウィルの近作において最重要プレイヤーとなっているペルー人ピアニスト、アルフレディト・リナレスが奏でる流麗なメロディー。グァグァンコーやクンビアといったラテン・ミュージックの――ちょっとやそっとでは醸し出すことのできない――濃厚で芳醇な香り。レゲエの古典的トラック〈Swing Easy〉のオリジナルなリメイクも、数々のアーティスト/楽団にカヴァーされてきたクンビア・クラシック“Cumbia Sobre El Mar”もここにはある。各要素が実験的に結びつけられながら、それらがここまで有機的なフォルムを描いた作品を僕は知らない。『Dog With A Rope』のなかでキューバ〜ジャマイカ〜コロンビアという遠く離れた国々はひとつに結び合わされ、いまだ誰も足を踏み入れたことのないトロピカル・ミュージックの楽園がここに築き上げられているのだ。
ここまで冷静を装って書いてきたが、僕は(『Tradition In Transition』を初めて聴いた時と同じように)『Dog With A Rope』という傑作の登場にかなり興奮している。何度でも強調しておきたいが、僕はこんな音楽を聴いたことがないし、まるで国名すら聞いたことのない異国の音楽を〈発見〉してしまったような感覚にすら陥っている。さぁ、今すぐこのCDのプレイボタンを押してほしい。そして……Enjoy!
大石始(ライター/エディター/選曲家)
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